sleepy princess and arouse prince
と、エルビスは白梅の刃をヴェルトの首に当てがった。
小笑いを見せたヴェルトは、何事もなかったように森の奥へ消えた。

肩の痛みのせいか、足の力が無くなり地面に座り込んだ。
出血が止まらないまま気が遠くなる。
攻撃をしてきた張本人は俺の手を握り締めたまま震えていた。
エルビスが俺を気にして、止血をしていた。
段々と意識も戻っていく。
すると、暗闇だった森に日が差し掛かった。

「‥私はアルルシス。蜘蛛師よ。」

少し落ち着いてから女性が口を開いた。
白雪姫の妹で、カナリア嬢の姉。
それもまたそれぞれ母親が違う3人。
でもカナリア嬢とアルルシスは似ていた。
深刻な顔をしていると、アルルシスとエルビスが笑っていた。
何がおかしかったのだろう。俺には理解できなかった。

「ところでアルルシスは蜘蛛師なんだ?それに人々は‥」

「‥私はお父様が嫌い。だから蜘蛛師になって‥城から出た。」

笑いが絶え、沈黙が続く中、彼女はエルビスの問いかけに答えたが、その表情に少し悲しげが見えた。

蜘蛛師は大半、一般庶民で殺し屋が多いらしく、アルルシスは「蜘蛛師さえなれば自由になれる。」そう思ったそうだ。
だから人を殺めた。自分の手で。
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