sleepy princess and arouse prince
もし間違いだったら俺のせいだ。
あんな簡単な治療を…。
諦めて襟を掴んだ手を離した。
ガタガタと震える足が情けなくなってきた。

「貴方じゃない。彼女は何かまた違うウイルスでこうなってしまった。」

「カイト‥。」

カイトが震える俺を子供を慰めるように抱きしめ、落ち着かせる。
担当の医者もカイトが言ったことに同意で、食中毒ではあり、また新たな毒が彼女の中で暴れているだと考えた。
それも魔術が掛かっていて、まるで魔女が掛けた呪いのよう。

とりあえずエルビスだけ集中治療室に残し、カイトと俺は部屋に戻った。
出来れば一人で居たい。何も考えたくなかった。

「貴方らしくないですよ?そんな暗い表情。」

カイトは俺を気にして声を掛ける。
俺はただ無視しか出来なかった。
思うように口が動かない。

白雪は目覚めて欲しかった。
最初は元の世界に戻るためにこうしてきた。
なのに、彼女を目を覚まして良かったのだろうか?
辛いのは白雪姫。
今の状態じゃ…

「リュウ‥白雪も辛いんだ。お前は彼女の為にしたんだ。自信を持て。」

「…」

いきなりカイトは俺の頭を撫でて、そう言い付ける。
まるで父のように。
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