sleepy princess and arouse prince
だが、姉の為に彼女は呪文を唱えた。
みるみるうちに毒が浮かび上がり、白雪は落ち着いて普通に呼吸をしていた。

さて、ヴェルトをどうするか‥。
考えている暇なんてない。
先にヴェルトが攻撃を仕掛けてきた。

「今度こそ、邪魔出来ないように殺してやる」

さっきとは別人のような口調。
また肩に目掛けて刃が向かってくる。
俺は反射的にその刃を白梅で弾く。
剣が交わる音が響いた。
この一撃が重い。
よくアルルシスはこんな奴と戦ったなんて。
今にも右腕が麻痺しそうだ。

「あぁぁあぁ!!」

すると、叫び声が王妃の方からした。
目に映るのは、カイトが王妃の首を絞めているではないか。
俺は慌ててヴェルトを避け、カイトの方に向かった。
いくらなんでもやりすぎだ。

「カイト、止めろ!!!」

俺はカイトから王妃を離した。
ずり落ちる王妃は咳き込み、座り込んだ。
カイトは当然のように冷たい瞳で俺を見てきた。
そんな悲しい瞳は俺を避け、また王妃の前に立つ。
今まで以上に彼は王妃に痛みを打ち付ける。

「カイト!!!」

「お前には分からない」

たった一言そう呟いて俺の横を通り過ぎていった。
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