sleepy princess and arouse prince
「よくも‥!ヴェルト!!!」
「カイト!!」
王妃は怒りがピークに達したのか、ヴェルトを呼び命令をした。
カイトの背後に向かって刃が舞う。
叫んでも絶対に間に合わない。
赤い髪が散った。
「‥カイト?」
目の前に起きたことが信じられなくて、不安が一気にこみ上げる。
俺は我を忘れ、底から怒りが増してくるのが分かった。
「‥丁度、切ろうと思ってました」
「まだ生きているな。図太い奴め」
だが、彼は生きていた。
背後から喰らった一撃は髪だけを切り裂いていたのだ。
安心するのはまだ早い。
カイトは再び冷たく悲しい瞳を開く。
その度、背筋がぞくっとして今にも壊れそうだった。
すると、エルビスがいる方から泣き声が響いた。
目を向けると、カナリア嬢が熊のぬいぐるみを抱きながら泣き叫んでいた。
その隣で慰めるエルビスがなんとも痛々しい。
いつの間にかアルルシスも白雪もカナリア嬢の側にいた。
「子供相手に本気で戦うなんて最低よ」
「これには訳が‥!!」
「男なら言い訳は言わない!」
などと、かなりアルルシスに責められていた。
情けないぞ、エルビスよ。
すると、王妃は俺に近付いてきた。