sleepy princess and arouse prince
王妃の表情は恐くて、彼女が近付いていくにつれ、俺はどんどん後ろに下がっていた。
細い指が俺の顔に触れる。
そして綺麗な爪が凶器の爪へと伸びていった。

「なぜ邪魔をする?そんなに白雪姫が恋しいか、小僧」

「…!?」

首筋を伝い鎖骨を通り過ぎて、心臓位置に王妃の指が少しずつ沈んでいく。
今まで味わったことのない感覚、苦しくて恐怖が襲う。
彼女が高笑いをしながら心臓を握れば終わる。
恐怖で足が動かないまま。

「私の邪魔をした分、苦しむが良い」

王妃は恐ろしい表情を現して、俺は心臓に何か被さった感触に震えた。
ピチャっと音を立てて体内から細い指が出て行く。
その瞬間、俺は崩れるように倒れた。
上手く言葉を発声れず、身動きも取れない。
まるで何者かが俺の中を支配するように。

その隙を見て、王妃はカナリア嬢を抱き上げ、ヴェルトは白雪姫を連れ去った。

ただアルルシスの叫び声だけが聞こえた。
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