sleepy princess and arouse prince
銃の先は迷いなく俺の額に接近して、ハイドは引き金を引く。
座り込んでもいないのに、身動きが取れない。
流石は王妃の騎士。このままじゃ‥

「サッド・ドロップ」

白梅を盾に銃撃を避けるが、細い日本刀似では保たない。
体中を弾丸が切り傷を付けていく。

すると、ハイドは撃ち続ける銃と違う、もう一つの銃を左手で握っていた。
サッド・ドロップ。悲しみに落ちる‥。
これは術なのか?
油断をしていた隙に、攻撃わまともに喰らってしまった。

「リュウ!!!」

ふらつく意識の中、必死にアルルシスが叫ぶ。
‥分かってる。早く白雪のところに行かなきゃ。
しかし、いきなり激痛と映像が頭の中に流れ出した。

「あぁぁぁ!!」

「サッド・ドロップ。唯一、俺が使える銃撃術」

撃ち続けていた銃から無数の火薬の入っていない弾が地面に落ちる。
やはり術か‥。
今の俺は嫌いな過去にさまよっていた。


「お母さん!お母さん!いつ産まれてくるの?」

幼い俺が、お腹をおっきくした母親に話し掛ける。
場所はリビング。
もうすぐで俺の妹が産まれてくる時の光景。

おかしな話。もう10年前の話なのに。
一番苦しいのは母親。
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