好きだと言えなくて

そして入学の日。

入学式をサボろうと校内をうろうろして場所を探していた俺は、裏庭に咲く桜の下で見つけてしまった。

あ・・・

大きな桜の木を笑顔で見上げていたのは、間違いなくあの雨の日の女だった。
そのぎこちなく真新しい制服を着ている姿から、そいつも俺と同じ新入生なんだとわかった。

同じ高校だったんだ・・・

そいつのその笑顔に見惚れていると、遠くから声がしてきた。

「春乃~!どこにいるの?式始まっちゃうよ~!」

「今行く~!」

その声にそう返事をした女は、俺に気づくこともなく、走って行ってしまった。

春乃っていうのか・・・

その後、春乃のクラスもわかったけど、学校内で会うこともなく毎日が過ぎていってた。
そう・・・あの雨の日までは・・・
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