好きだと言えなくて
授業中寝ていたことを職員室で注意されて、帰るのが少し遅くなった俺は、玄関で春乃に会った。
傘を忘れてきてしまったのか、春乃は雨が降る外を呆然と見ていた。
「これ使えば?」
傘を差し出しそう声を掛けると、春乃はビックリした顔で俺を見た。
「え・・・あの・・・」
突然話しかけられて何も言えずにいた春乃に、俺は強引に傘を渡して、そのまま雨の中を走って行った。
その時、
「待って!!」
と声がして、振り向いた俺に、春乃が走ってきて傘を差してくれた。
目の前で見る春乃は、かなり小さくて、背の高い俺に手を伸ばして必死で傘を差していた。
俺は、春乃から傘を奪い取って春乃の代わりに傘を差した。