好きだと言えなくて
1年前、あたし達は高校に入学してすぐに出会った。
その日、少し寝坊したあたしは、天気予報を見ずに家を出てきてしまった。
昼からの降水確率が80パーセントだと知ったのは、学校に着いてからだった。
そして今、あたしは目の前で降っている大雨に、途方に暮れていた。
「どうしよう・・・」
「これ使えば?」
えっ?!
放課後、玄関の前で呆然と外を眺めていたあたしに、差し出された傘。
その傘を差し出した人は、あたしの知らない人だった。
「え・・・あの・・・」
あたしがビックリしてまともに話せずにいると、その人はあたしに強引に傘を渡して・・・
そのまま雨の中を走って行った。