好きだと言えなくて
「・・・・・・」
何も言えずにいたあたしを、抱きしめたままの澤田くん。
その澤田くんの気持ちが痛くて、あたしはやっとの思いで声を出した。
「ごめんなさい・・・あたし・・・好きな人がいるの・・・」
その声に、また力を入れた澤田くん。
「だから・・・あいつのことなんか、忘れさせてやるから・・・」
「ダメなの・・・あたし・・・俊ちゃんじゃなきゃダメなの・・・」
そう言ったあたしの目から流れた涙は、止まることを知らない。
「俊ちゃん・・・俊ちゃん・・・」
そんなあたしを抱きしめる力を少し緩めた澤田くんは、あたしの顔を強引に上げさせて、じっとあたしの顔を見つめた。
目を閉じた澤田くんの顔が近づいてくる。
そしてそのまま、あたしの唇は、澤田くんの唇に強引に奪われていた。