好きだと言えなくて
やだ!やだよ!
ファーストキスをこんな形で奪われてしまって、涙が止まらない。
澤田くんから離れようとするあたしだったけど、澤田くんの力がものすごくて・・・唇を離すことも出来ない・・・
あたしなんて、もうどうにでもなればいいと諦めかけたその時・・・
「おい!」
後ろからいきなり声がした。
見なくてもわかる。
その声は、あたしの大好きな人の大好きな声だった。
「なんだよ!」
やっと唇を離した澤田くんは、またあたしを抱きしめる腕に力をこめた。
その力が強過ぎて、澤田くんの顔を見ることも、後ろを振り返ることも出来ないでいるあたし。
「なんだよって・・・そいつ、泣いてんじゃん!嫌がってんじゃん!離してやれよ!」
そう言った俊ちゃんは、澤田くんの腕からあたしを引き剥がしてくれた。
澤田くんの顔を見ると、すごく辛そうな顔をしてあたしを見つめた後、澤田くんは、何も言わずにその場を後にした。