好きだと言えなくて
澤田くんが行ってしまった方をただ黙って泣きながら見ていたあたしに、後ろから俊ちゃんが話しかけてきた。
「お前さぁ、その気もないのに何してんだよ!好きでもないやつと祭りに2人で来るとか・・・浴衣まで着て・・・そんなん、誘ってるようにしか見えねぇっつうの!お前、バカだろ・・・」
好きでもないやつと2人で祭りに・・・って・・・
じゃあ俊ちゃん、やっぱりあの女の子のことが好きなんだ・・・
そう思って、また涙が溢れてきたあたしは、俊ちゃんに気持ちを気づかれたくなくて、
「そんなんじゃないもん!」
そう俊ちゃんのことを睨んで言った。
その俊ちゃんの後ろには、あの背の高い女の子が立っていたんだ。
「あたし・・・帰る!」
そう言ってあたしは、俊ちゃんが呼び止めるのも聞かずに、その場を後にした。