好きだと言えなくて

その時・・・

「春乃!」

声のした方を見ると、俊ちゃんが走ってくるのが見えた。

「俊ちゃん・・・」

俊ちゃんは、あたしのところまで来ると、そのままあたしを抱きしめた。

「良かった・・・春乃・・・」

俊ちゃんに力強く抱きしめられて、さっきまでの恐怖から解放されたあたしは、一気に力が抜けてしまった。

「俊ちゃん・・・」

涙を流しながら俊ちゃんの名前を呼ぶと、俊ちゃんはあたしの涙を拭ってくれた。
その時、俊ちゃんの後ろに彼女の姿が見えたあたしは、慌てて俊ちゃんから離れた。

「ご、ごめんなさい!あたし、もう大丈夫だから!」

そう言ってその場から離れようとしたあたしを、俊ちゃんがまた抱きしめた。
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