正しい殺人事件

先程から少年は、女先輩の方ばかりちらちらと見ている。

「ま、理由はなんでもいいんだ。ね、君。財布はどこだい?」

「先輩の靴箱の中だよ。鍵も付いてるから安全だと思って」

「はい、これで全部かな。あ、女先輩は、奈々ちゃんに泥棒呼ばわりしたことに謝罪と、財布をあんな無用心な落とし物箱から保護したことに感謝してね」

「…あなたに言えばいいの?」

「んー、この二人が伝えてくれるだろうからな。いいよ、それで」

「ごめんなさいね、ありがとう」
うん、いい人だ。
大人だ。

「それと、あなた。今、いくつなの?」
「16だけど…?」
「私は、18よ。目上の人には敬語をつかいなさい」
女先輩はいたずらっぽく笑った。

「はい、すみません。先輩」
あぁ、この人も初対面なのに、僕を受け入れてくれるのか。


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