正しい殺人事件
「不気味だと思ったわ」
真紀は自らの腕を抱きしめる。
「お前、怖いの嫌いだもんな」
沙羅がからかうように笑った。
「違うわ。奈々ちゃんのことが、…怖かった」
「そんな世界で、違和感も感じていないことが怖かったの」
「あぁ、そういうこと。…しょうがないんじゃね?生まれてからずっとそう見えてるんじゃ、それが当たり前の世界なんだろ」
「…人間を遮断してるのかしら」
「あ?」
「顔の認識ができないだけじゃなくて、名前も覚えられないのは、他人に関する情報を全て拒絶してるのかな、って。」
専門家じゃないから、知らないけど。
真紀は自信なさ気に付け足した。
「お前、そんな難しげなこと考えてたのか」