正しい殺人事件
『どうもしないよ。先輩さんに簡単に僕らの事情を説明して解散したよ。僕はバイト行ったけど』
「ふうん」
パクリ、と残りのクレープを口に含む。
「えらくその先輩のこと、気に入ったんだな」
いつもは、事情なんて説明しないで放置するくせに…
口には出さずとも心の中でこぼす。
奈々が心の中で思ったことも幼なじみには伝わるから、言っているのと変わらないが。
ちなみに、幼なじみの心の中は奈々には伝わらない。
奈々が不公平に思う所のひとつでもある。
『なに、奈々ちゃん。妬いてくれるの?』
幼なじみが、からかいながら言う。
「…気に入ったのか?あの先輩のこと」
『大丈夫だよー。僕は奈々ちゃんが一番大好きだからねー』
「ちがうわい!!お前があの先輩を気に入ったか聞いてるんだ」