正しい殺人事件
『そうだね…、気に入ったよ。って、言ったらどうする?』
「…仲良くしてやるよ、その先輩と。先輩の顔、覚えてみる」
奈々は最後の一口を口に押し込むと、クレープの包みをぐちゃぐちゃと丸め、ごみ箱に向かってぽんと投げ入れた。
『ナイスシュート』
ぱちぱちと言葉で拍手をする幼なじみ。
「ごまかすなよ、幼なじみ」
『いいよ、覚えなくて。僕は奈々ちゃんがいれば十分だからね』
なら、言わなくて
いいじゃんか。
席を立った奈々は、足をアパートに向ける。
『ごめんね。奈々ちゃんは昔のこと、話すの嫌いだもんね』
「…好きな訳、あるか」