正しい殺人事件
『ごめんね、でも詳しくは話してないから』
「…別にいいけどさ。私は覚えてないんだし」
奈々ちゃんの、痛い、苦痛に満ちた記憶。
それは、僕が背負うもの。
奈々ちゃんの、昔。
痛みと恐怖。
・・・・・・孤独。
「別に、いい。幼なじみが気に入ったんだから良いやつなんだろ。その先輩」
『いい人だよ。珍しい人でもある。僕のことを肯定的に認めてくれる人なんて初めてだ』
それが、どうしようもなくうれしかった。僕は、奈々ちゃんの一部でしかないのに。
奈々ちゃんの嫌がることなんて、したくなかったのに。
話したくなってしまった。
僕たちのこと。
僕のこと。
「AもBも居るだろう」
『あの二人が好きなのは、認めているのは、奈々ちゃんだけだよ。僕は、奈々ちゃんの一部だから、彼女たちに認められているだけだよ』
沙羅ちゃんは、僕を認めている。
嫌悪するというかたちで。
真紀ちゃんは、僕を認めている。
同情するというかたちで。