大好きな君へ
君は覚えていたんだね
僕は余りに時間が経ちすぎて
忘れていたみたいだ
でも目の前の大きな石に刻まれた
愛しい君の名前を見つけて
やっと
やっと思い出すことが出来た
「随分と待たせたみたいだね」
僕はそう言ってから何十年かぶりに彼女の名前を呼んだ
それを聞いた彼女は目を細めながら『あなたこそ待ったでしょう?』と言う
そうかも知れない
随分と長い間、あの大きな樹に登って
君を
君たちを見守っていた
君たちは決まって毎年夏休みの今日訪れたっけ
僕に似ている男の子に『おとうさん』と呼ばれ
君とよく似た女の子に『おじいちゃん』なんて呼ばれて
僕は若いのに戸惑ってしまったよ