桜姫
だが、男は素早く屋根から降り私の顔に口を近づけボソっと呟いた。
「ーーー知りたくば、
京の東の山奥に佇む城を訪れよ」
そう告げ、頬に生暖かく、柔らかい感触が走った。
それはちゅっと音を立て離れ、続き屋根に飛び乗り去って行った。
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「あんやろー殺す」
玖羅はギリギリと奥歯を噛み締めながら男の消えた闇を睨みつけた。
「…………当たり前でしょう。
なぶり殺しますよ」
総司は私の正面に立ち、私の頬をゴシゴシと擦った。
『…………何者だーーー』
桜羅のどうしようもない戸惑いと怒りを交えた言葉が闇に溶け込んだーー。