檸檬の変革
リビングの扉が開いたと同時にあちきくんと私は大笑いした。
何故かって?
鼻の頭とアゴにデカい絆創膏を貼り付けていて私達はその理由を知っていたからだ。

徹はブスッとしながらさっきまで千穂子が座って居たコタツに入ってきた。

徹は身長170cm 。中肉中背で黙っていれば格好いいけど、喋ると三枚目。文也と同じクラスで私の兄貴的存在だ。

絆創膏の原因は昨日の夜、あちきくんと徹は徹夜でバイクのプラモデルを造っていた。
お互い『眠らない。』『寝かさない。』とやりあっていた。
夜中の3時過ぎに私が来たら
2人ともテーブルに突っ伏して居た。
あちきくんはプラモデルのパーツを綺麗に避けていたが、徹は紙ヤスリに顔をつけていた。
そして、ふられたばかりの女の子の名前を言いながら顔を擦っていた。

私はあちきくんをそっと起こし徹を指差した。
徹は『あけみちゃーん…。』と言いながら顔をまた擦った。
『プププ。』あちきくんが必死に笑いを堪えてる。
そして、ソッと紙ヤスリの端を両手でシッカリと掴むと思いっきり引っ張った!

『イデ!!!!!!』
徹はガバッと起きた。

あちきくんと私は必死で声を抑えて転げながら笑った。
徹の鼻とアゴはヤスリで擦れて血が滲んでいた。

< 153 / 193 >

この作品をシェア

pagetop