檸檬の変革
文也が音楽をかけた。
REBECCAが流れ始めた。

私は文也の横顔をずっと見ていた。
文也はニヤリと笑い言った。
『そんなに見てると俺の顔に穴が開くぞ。』

私はクスリと笑った。
その顔を見た文也が話し始めた。
『もう、何も心配ない。俺もあちきも徹もこれからも仲間だし、千穂子が居なくなることも、もう無いから、お前は何も心配する事もその事で苦しむ事も、泣くことも無いから。笑っていて欲しい。』

私は聞いた。
『何処に行くの?』

文也は前を向いたまま言った。
『海。』

私はハッとした。
忘れて無かったんだ。私のほんの小さな約束を文也はちゃんと覚えていたんだ。


私も前を向いて車の先の景色を見ていた。

REBECCAの曲だけ流れている。
2人は黙ったまま。
車は海に向かった。


この時間、一瞬でも私は大切にしたい。
そして、今だけは文也は私だけの文也になってくれた。



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