檸檬の変革
車の中に海の香が流れ込んできた。

文也は運転席と助手席の窓を開けた。
車の中に海の香りが一気に広がった。

車が砂浜に着いて、エンジンを止めた。

私は外に出た。

波の音。
潮の香り。

地平線の先が薄く紫色になっている。
もう直ぐ夜明けだ。
私はヒールを脱ぎ捨て素足で砂浜の感触を楽しんだ。

文也は運転席のドアに寄りかかり煙草に火をつけて私のはしゃいでいる姿を眺めていた。


私は波打ち際で打ち寄せてくる波を足でバシャバシャと弄んだ。

薄いピンクの綺麗な貝殻を見つけた。
二枚貝の貝殻。
私はソッとつかみ上げ手のひらに載せた。

貝殻を見つめていたら、文也が後ろから私を抱きしめた。
そしてその貝の片方を優しく取り上げた。
振り向くと文也はその片方の貝殻を左の胸ポケットに入れていた。


文也は私の腰に手を回し海の地平線に２人並んで立った。

太陽はまだ見えない。
紫色が広がってきた。夜明けはもう直ぐそこまで来ている。
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