檸檬の変革
『雨の日は遊廓は暇になり、少女の仕事も暇になる。そして………。』

『雨が足音や姿を隠してくれる。何より紫陽花が梅雨時には神社に沢山咲いていたから見つかり難かったから。』


私は黙ってマスターが先を話してくれるのを待った。


マスターはゆっくり続けた。


梅雨時は雨の日が多く、翌日雨も降った。
少年は神社の軒下で少女を待った。

どの位かは分からないけれど、雨が紫陽花の葉に落ちて出る音さえ音楽に聞こえる位少年は嬉しそうだった。

雨の音に聞き入っていると、少女が丈の短い着物の裾を濡らして立っていた。

少年は笑顔で自分の横を指差し隣に座るように促した。

少女はその指差した所より少し離れてチョコンと座った。


雨音が聞こえている、少年は少女に自分の名前を言った。

『僕は雪寛。君の名前は?』

少女はポツリと言った。

『はな』
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