檸檬の変革

少年は小枝を持ち濡れた地面に《はな》と書いた。


少女はジッと少年の持つ小枝を見ていた。
少年は何度も少女の名前を書いた。


そして自分も小枝を拾い少年が書いた文字を一生懸命真似て書いた。

はな

たどたどしいがしっかりした文字だった。

はなは雪寛に笑いかけ立ち上がり雨の中を走って帰った。

はなは次々文字を覚えていった。

多少の文章を覚えた頃にははなは雪寛に自分の身の上を話す仲になっていた。

はなは東北の山間の小さな集落で生まれ幼い弟妹の為に売られた当時ではよくある話だった。


雪寛ははなに色々な事を教えた。
海を見たことが無いはなに海の話をしたりしたが、はなが一番喜んだのは百人一首の話だった。