檸檬の変革
雪寛は手紙を握りしめて自分の無力さ、幼さに泣いた。

雨が紫陽花に滴り落ちているのを何時までも見ていた。



その後、はなは流行り病で廓の中で息を引き取ったのを風の噂で知った。


雪寛はなが眠っている無縁仏の寺に行った。


紫陽花が沢山咲いていた。


寺の住職が呼び止めた。

ここの無縁仏に眠っている遊女の中に
紫陽花を握り締めて笑顔で亡くなった遊女がいた。

梅雨の長雨を嫌う遊女達で只1人雨を好み
格子窓から降る雨を嬉しそうに眺めた美しい遊女が居た事。

雪寛は直ぐにその遊女がはなだと気がついた。

雪寛は無縁仏に手を合わせはなの冥福を心から祈った。

雪寛の姿は梅雨時終わりの霧雨に包まれた。
< 23 / 193 >

この作品をシェア

pagetop