檸檬の変革
ボトルレター
父が亡くなって10日が過ぎた。
突然の死。呆気なかった、最後にした会話も覚えていない。
最近父さんと話なんてしてなかったから。
紫織は父親の書斎の遺品を母の代わりにしていた。

母は父が亡くなった事を認めたくないのか
魂が抜けた様に呆然として、何も出来なくなっていた。

紫織は父の書斎にあまり入った事が無かった。
書斎に入ってゆっくりと見回した。

大きな本棚に沢山の本がキチンと大きさと作者名別に並べられていた。

引き出しを開けると紫織は溜め息をついた。
潔癖な正確さで文具が収納されていた。

こうなると何が何でも父の潔癖を崩したくなった紫織は片っ端から扉や引き出しを開け始めた。


塵一つ無い部屋。
趣味は読書と映画。
口数少なく、物静かを絵に描いたような人。


父の事を人に聞かれた時に答えていた紫織から見た父の印象。


紫織は父が大声で笑った事を見た事が無い。
母は反対によく喋り、よく笑いその分よく泣いた。


父と母は正反対の性格だ。
< 71 / 193 >

この作品をシェア

pagetop