檸檬の変革
紫織は缶の蓋を開けて少し驚いた。

沢山の手紙と古い写真の束。そして小さな袋。

写真の束を手に取った紫織は目を丸くした。

そこに写っていた数人の若者と後ろに綺麗に並べられた数台のバイク。
その中に父が笑って立っていた。


整った顔に笑顔で今なら絶対逆ナンされる様な位格好いい父。
並んだ他の若者もみんな端正な顔立ちに笑顔を浮かべていた。


紫織は写真を次々見ていった。

バイクを修理しながら仲間と写っている父。
海をバックにバイクにまたがっている父。

一番驚いたのは何処かの家の部屋でテーブルに沢山のお酒の瓶を並べて赤くなった顔でポーズをとって写っている父だった。


どれも紫織の知らない父の姿だった。


紫織は自分の知らない父が居た事が淋しく、取り残された気持ちに胸が一杯になり涙が溢れた。


最後の写真は仲間らしい男女10数人がめいめいポーズを決めて笑って写っていた写真だった。
父はその真ん中に女の子の肩を抱き一番笑顔で写っていた。
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