檸檬の変革
母はゆっくりと散らばった手紙を拾い集めた。

日付順を知っている様に集めていた。

そして手紙の束を缶に戻し、蓋をしてボトルレターも持って紫織に声をかけた。


『こんな暗い所に居ないで、下に降りてらっしゃい。』


紫織は母について書斎を出て下のリビングに降りて行った。


書斎は主を無くしたのを知っているかの様に一層淋しそうに感じた。



リビングに行くと、お線香の香りが鼻についた。
慣れない匂い。父の穏やかな顔が遺影になって直ぐ下に白い箱が置いてある。
父の骨。

もう絶対会えない父。


母は冷蔵庫から麦茶を出して座った。
紫織も母と向かいあう様に腰をおろした。


テーブルにはボトルレターと缶が置いてある。


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