檸檬の変革
母は続けた。
母さん夢中で父さんに返事を書いたわ。

自分の方が希望が持てず死のうとしていたのに何が出来ると言うの?

ってね。


住所も書いてね。
それが父さんと母さんの出会いだった。


母は父の遺影を見つめた。


そして缶を開けて手紙の束を出しながら独り事の様に呟いた。


父さんだって母さんだって始めから大人じゃ無かったのよ。
沢山悩んで、笑って、泣いて、大人なんてって思ってた。
でも、いざ自分達が大人になって、紫織が生まれて初めて親がどう言うものか分かってきたの。


父さん言ってた。その写真の仲間とボトルレターは俺の全てだ。
何時か紫織が年頃になったら、話そうと思うって。



そして、小さな袋の中身を取り出した。
傷が沢山付いた銀のリングが2つ。
ペアリングだった。

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