檸檬の変革
『夏樹。夏樹。』

遠くで、僕を呼ぶ声がする。
声は始め微かな声だったがドンドンハッキリ、大きな声になり、僕は瞼を開けた。


母親の顔が目の前に飛び込んできた。
泣いている。
父親は少し離れた場所で立っていたが、僕が見たら背を向け肩を震わせた。

担当医が僕に言った。
『手術は一応成功したが、まだまだ油断は出来ないから、暫くは安静にね。』
笑顔だった。


僕はやっぱり手術の成功に実感出来なかった。
それよりも、夢で見た海の方が妙にリアルで感触さえ感じられた。


あの夢は何だったんだろう?
僕は白い天井に夢のビジョンを浮かばせながら感触を何度も噛み締めた。





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