檸檬の変革
沈黙がどれほど続いただろうか。
僕は重い空気に耐えられず席を立とうとした時、父が口を開いた。

『夏樹。座りなさい。』
僕は椅子に座り直した。

父が確認する様な口調で話した。
『夏樹。夏樹はまだまだ普通の生活を送るまで回復していないんだよ。それは理解しているよね?』

僕は頷いた。

父も頷いて話を続けた。

『それでもシンガポールに行きたいのは夏樹にとってそんなに大切な事なのか?』


僕は父と母の顔を真っ直ぐ見て言った。

『とても大切な事なんだ。だからお願いします。大丈夫。僕は絶対無理はしない。』

『絶対に無理はしない。後、医師の許可が出たら好きにしなさい。』


そう言って父は席を立ち食卓から離れた。
母はまだオロオロしていたが、僕も食べ終えた食器を流しの中に片づけて二階の自分の部屋に戻った。



夢魔…………。君に会いに行く。


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