熱視線



「また、いつもの癖か?」


課長は嫌みを含んだような笑みを浮かべ、眼鏡の奥に鋭い目を覗かせながら、私を見据えた。



そう…彼は私のことを全てお見通し。

その視線に捕らえられたのなら、私は嘘などつけない。

だって、彼は私の心と体、その隅々までを熟知しているのだから。



「気付いたら、いつも残業になってるの」


目を伏せながら言う私に、彼は


「全く君は……」


と、目を細め、呆れるように笑うと、私の顎に指を添え、少し持ち上げ口づけをした。

私はそれに驚いて、慌てるように両手で彼の胸を押す。


「課長、ここは会社ですよ?」

「知ってる…だから何?

それに、課長じゃないだろ?
いつも二人の時には名前を呼べと言っているはずだけど」

「…でも、ここは……」

「俺の言うことが聞けない?」


余裕の表情を浮かべる彼に、
私は困惑の表情を作って訴える。


「素直じゃない君には、お仕置きが必要かな?

それなら、こうしよう。

上司命令だ。
今ここで君からキスをして?」


彼はレンズの奥の瞳で、私の反応を観察するように真っ直ぐ私を見ている。



決して逸らすことが出来ない視線

その視線に抗うことなど出来ない


「課…孝明さん……」


私は彼の唇に唇を重ねた。
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