アンジュエールの道標
「なんか、カッコいい人だったね」
「……そう?」
確かに顔立ちはよかったと思う。
特に笑うとほんわかとして綺麗だった。
「でも、変な人だね」
「……うん」
というか、気味が悪い。
ううん、それともちょっと違う。
なんだろう。
酷く、現実離れしてる気がする。
とりあえず――。
「あ」
手の中にある名刺をくしゃりと握りつぶしてゴミ箱に。
「捨てちゃうの?」
「きっと宗教の勧誘よ」
「あー、なる」
そんなものには興味ない。
どんなにお願いしても、神様が何もしてくれないことはよく分かってる。