アンジュエールの道標
ふと、隣の家を見てみた。
明かりの無い家。
なんだか一層暗く見えて、私は身震いをひとつして自分の家に向かった。
玄関のドアの前。
ドアノブに手をかけるとかぎはかけられてなくて。
「……ただいま」
いつもなら返事なんて無い。
けど、
「万里なの?」
その声とともにパタパタとスリッパの音。
そして、
「おかえり、……って、えっ? ハル!?」
ママが私の足元に居るハルに驚いて声を上げれば、ハルも甘えた声で「みゃあ」と鳴く。
「なんだって!?」
「えっ?」