アンジュエールの道標
『……永久殿、何故庇われる?』
地を響かせるような竜神の声。
それすら悪意に、闇に染まっておるような気がした。
「ほんの少し、やんちゃだっただけなんだよ。ね?」
「……」
人の姿をしておるのに、人の匂いがしない。
いや、こやつは無味無臭。
なにも感じない。
奇妙な存在。
「この子の母親に頼まれちゃって。それ忘れてた私の責任だから」
『妾には関係ない』
「うん、でも君も闇に捕われてるよ?」
永久の台詞に、湖がざわりと波立った。