アンジュエールの道標
そう言って首を傾げる彼女に彼はまたクスリと笑った。
「寒いよ、もう12月だからね」
「……そう」
彼女はそれだけ言ってまた橋の向こう側をじっと見つめた。
いつものようにやってくる彼。
厳つい革ジャンにぴったりとした革のパンツ、ブーツにはチェーンが巻かれ歩くたびに金属音が鳴り響く。
髪は真っ黒なのにワックスで綺麗に固められ、パンク調の彼。
「今日は、声掛けてみたら?」
「……」