アンジュエールの道標
「手を」
えっ?
「手を掴んで」
誰の声?
「いいから手を。そこから助けてあげる」
真っ暗でどこに伸ばせばいいのか。
分からないけどもがくように手を伸ばして――。
「いい子」
その声とともにあたしは物凄い力で引き上げられた。
明るい。
ここは最初に居た場所だ。
そして、私の手を掴んでいたのは、
「よかった。捕まらなくて。こんな時間に寝るなんて思わなくてね、彼が叫んでたからびっくりしたよ」
あの時の彼だった。