アンジュエールの道標

「ねぇ」


その声に彼女の髪が揺れる。


「名前は?」


これってナンパ?

そんな思いに眉をひそめ彼を見ると、またクスリと笑う。


「まぁ、いいっか」


そう言うと腕の中の猫が寒そうに身を縮める。


「明日は声を掛けてみたら?」


その一言を残して、彼はまた猫を抱いたままいなくなった。


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