アンジュエールの道標


喉から本当に声が出ない。

息はしてるのに、喉が震えない。


自分の状態に驚く彼女に、猫を抱いた彼は寂しそうに微笑んだ。


「もう、声も出ないんだね」


その台詞の意味なんて分からずに、彼女は彼を見上げた。


「名前覚えてる?」


名前、あたしの?

そんなの――

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