アンジュエールの道標


「そうか、白夜の血を浴びたからか」

「……はい?」


納得した永久とは違い、未だ何も理解出来ない万里。

そんな彼女に永久は「あのね」と話し始めた。


「今まであーゆーの見えたことなかったでしょう?」

「それは……」


勿論。この間のものにしたって初めてだというのに。


「今日、この橋を渡ろうと思ったのはどうして?」

「えっ? あ、ただの買い物で……」


だけど、最近は通ってなかった。なんとなく嫌で大回りしてもう一本川下の橋を利用してたのだけど。


「そういう感覚、大事にしてね」

「……」


なんだろう。褒められたのに嫌な予感しかしない。

万里はひとつ身震いをして、男が消えていったほうを見つめた。


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