アンジュエールの道標
「キスは味見の方法じゃないんです!」
そう叫ぶ彼女に白夜はニヤリと笑った。
「ならば、その首元に食いついてやろうか?」
「――っ」
綺麗な顔でニヤリとわらわれるほど背筋が凍るものは無い。
「それからその身の血を一滴残らず絞り取って――」
「はい、そこまで。それやったら俺が怒るよ?」
「冗談じゃ」
「……」
本当に? と疑いたくなるような台詞に万里が白夜をジトッと見れば、白夜もフンッと鼻を鳴らして笑った。
「じゃから、接吻で我慢してやるからいちいち喚くな」
「なっ、せ、せ、せっ!?」
「はいはい、お仕事も終わったし皆でお茶でもしようか?」
あの大きな洋館へ。
そして、フルーティな紅茶でも召し上がれ。