アンジュエールの道標
「ホントだね。彼を待つ場所が居るから、死んでもなお架橋工事の邪魔をして。ねぇ、そんな彼女でも天国にいけるのかな?」
「天国に地獄。それすらも人間共が作った幻に過ぎん」
「白夜は夢が無いなぁ」
「死んで夢見てどうする。そもそも、わしは1000年ほど生きてきたが、あの世から帰ってきた奴を知らん」
白夜の言葉に「俺も」と笑って携帯を取り出す。
「そうだね、取り合えずクライアントに電話して報酬貰わないと」
「モンプチ一年分と言え」
「嫌だよ。だってここの家賃も払わないとだし、結構大変なんだから」
そう言いながら携帯を操作して――
「あ、もしもし永久です。
ご依頼の件なんですけど――」
もうそこに太陽は無く、空には白い月が昇っていた。