アンジュエールの道標
『鈴木先生、女だからって生徒に舐められてるんじゃないですか? もっとビシッと――』
子供達を注意すればするほど、あたしの声を聞かなくなった。
『美香子っ! 学級崩壊だと!? まったくお前は何をやらせても――』
この仕事に就けば父に褒めてもらえると思ったのに。
『美香子には向いて無いのね。辞めるにしても期末まではなんとかしなさい。それがけじめってもの――』
辞めたくない。
お母さん、あたしは先生になりたいの。
「よく頑張ったな、美香子」
皺くちゃで大きな手が、あたしの頭をぐしゃぐしゃと遠慮なく撫でた。