アンジュエールの道標
「話は戻るけど、早くこの夢から抜け出して。心配してるよ?」
「えっ?」
「アレに捕まってしまうと俺でもどうしようもなくなるから」
言ってる意味が分からない。
「あのね、ナイトメアに夢を食べられると君の一部分も食われてなくなる。それは例えば記憶だったり感情だったり」
「……別に見たくて見てるわけじゃ」
私だって見なくてすむなら見たくない。
「なら、見ないように問題を解決しないとね」
「それは……」
出来ない。怖くて、そんなことは――。
「俺が解決してあげる」
ニコリと黒曜石のような瞳が柔らかく笑う。
銀色の髪が一層輝いて――。
「これ、今度は失くさないで」
冷たい手がそっと私の手を取って何かを掴ませた。
「待ってるね」
眩しい。
真っ白い光が周りと包んで、彼も、白夜と呼ばれた猫も、その光に溶けて。