アンジュエールの道標

それだけ。

なのに涙が溢れて――。


「うん、よく頑張ってる。だが、美香子」

「……はい」

「投げ出しちゃいかん」

「……」

「誰もお前の事を『先生』と呼んでくれないか?」


生徒たちはあたしのことを『美香子』って呼び捨てにしたり、『ババァ!』ってののしったり。

それでも、


「……います」


ほんの数人だけ、ちゃんと『先生』と呼んでくれる。


「なら、戻らんとな」

「……」


分かってる。

分かってるけど――。

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