アンジュエールの道標
「で、でもっ! 猫が喋るなんて」
「猫又の白夜」
「えっ?」
「普通の猫とはちょっと違う。こう見えても君の20倍は生きてる」
「……」
わけが、分からない。
唖然とする私に彼はニコリと優しい笑みを浮かべる。
「あのね、目に見えるものがすべてじゃない。それを君は何度も感じたはずでしょう?」
「――っ!?」
そういわれて、返す言葉がなかった。
彼の言葉は本当だから。
そんな私の態度に、彼はカップをソーサーの上にカチャリと置いて。
「それじゃ、話を進めようか」
とても優しい笑顔を見せた。