アンジュエールの道標
「君の事を心配して、彼が依頼してきたんだ。だから君の名前も、紅茶が好きなことも、いろんなことを知ってる」
「……彼?」
そう聞き返すと、永久さんはコクリと頷く。
『彼』
そうなんだ。それなら!
「――どこ? どこに居るの!? この家の中?」
立ち上がって辺りを見渡した。勿論、見えるのは永久さんと隣に居る白夜さんだけ。
でも、この家は広いもの。
もしかしたら別の部屋に――。
「ここにはいないよ」
「えっ?」
「それは君も分かってるんじゃない?」
「……」