アンジュエールの道標
カチャリと置かれるカップから湯気が上がる。
そしてほんのりとオレンジの香りが部屋を支配し始めた。
「で、何があったの?」
「……あ」
あの日。
私は自分の部屋に居て、だからすべてを知ってるわけじゃない。
でも、あの悲鳴がハルのものだとしたらすべては私の思い違いで。
だから、
「えと、もうすべて解決って言うか」
「うん、君の力がゆっくりと戻り始めてるから彼らも焦ってるみたいだね」
「えっ?」
永久さんの声にハルはピクリと耳を動かし、対照的に白夜さんは大きく欠伸した。