アンジュエールの道標
この声――っ!?
「えっ? 誰?」
優子の声よりも先に私はその声の主を探した。
「なのに寝坊?」
クスクス笑う彼は、
「万里の知り合い?」
「……ううん」
今朝の夢に出てきた彼だった。
「ダメだよ、しっかり寝ないと」
違うのは髪の色。
夢の中では銀色だったのに今は紅茶色。
勿論瞳は黒曜石のような色のままだけど。
そして、その足元には真っ白な毛足の長い猫がいた。
「ほら、寝不足は美容に悪いって言うし」
クスクス笑う彼。
「なに、この人」
「行こう、優子」
そう言って優子の手を引っ張って――。
「――っ!?」